虚血性心疾患

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虚血性心疾患とは

心臓は1日に約10万回も収縮・拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。この収縮・拡張する心臓の筋肉(心筋)に、酸素や栄養を含む血液を送り込んでいるのが、心臓のまわりを通っている冠動脈という血管です。
虚血性心疾患とは、この冠動脈が動脈硬化などの原因で狭くなったり、閉塞したりして心筋に血液が行かなくなること(心筋虚血)で起こる疾患です。
動脈硬化とは、老化によって血管が硬くなったり、血管の壁に脂肪などの固まり(プラーク)が蓄積して血管の壁の一部が盛り上がり、血管の内腔が狭くなっている状態です。
冠動脈が動脈硬化などで狭くなると、血流が悪くなって心筋に必要な血液が不足し、胸が痛くなります。これが狭心症です。
さらに動脈硬化が進み、何かの原因で血管内のプラークが破れて冠動脈の血管内に血栓ができ、完全に詰まって心筋に血液が行かなくなった状態が心筋梗塞です。
心筋に血液が行かないと、その部分が壊死してしまい、壊死の部分が大きくなると心臓の収縮・拡張ができなくなるため、命にかかわる危険な状態となり、緊急の治療が必要です。
最近は、狭心症の中でも心筋梗塞に移行しやすい不安定狭心症と、心筋梗塞を合わせ、急性冠症候群と呼んで原因や病態、治療について研究されています。
なお、心筋虚血により心筋の収縮力が弱まると心不全状態になります(虚血性心不全)。また心筋虚血により心室細動など致命的な不整脈を引き起こすことがあります。
これらの病態を総称して虚血性心疾患あるいは冠動脈性心疾患と呼ばれています。

 

 

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図:日本心臓財団ハートニュース28号より

 

 

 

 虚血性心疾患に含まれる疾患
・狭心症
・心筋梗塞
・虚血性心不全
・虚血性心疾患の致死性不整脈

 

 


虚血性心疾患の診断

虚血性心疾患を診断するためには、第一に心筋虚血によるさまざまな症状、たとえば狭心症や心筋梗塞、あるいは心不全、致命的不整脈と思われるような症状があって、第二に心筋虚血があること、第三に冠動脈に動脈硬化性病変があることを確かめるというのが手順となります。
心電図検査
心筋虚血の証明のためにはもっとも簡便な、そして確実な方法は心電図検査です。狭心症の場合には症状が収まってしまうと変化もみられなくなってしまうので、症状があるときの心電図が必要です。このために、24時間連続心電図記録装置が用いられたり、家庭用の携帯型心電計が用いられたりします。狭心症の中には、発作の後になっても心電図変化が残っていることがあり、また、無症候性といって、症状がなくても心電図には虚血性変化がみられることがありますので、注意が必要です。運動負荷心電図検査もよく用いられます。これは運動によって心筋虚血を誘発する試験です。薬物負荷誘発試験を行う場合もあります。
画像診断
心筋虚血の状態になると心筋の収縮力が低下するので、これを超音波エコー検査で検出することもできます。次に汎用されているのはアイソトープを用いた心筋シンチグラム検査です。アイソトープを静脈注射した後、心臓の表面の放射能活性の分布を調べます。放射能活性が低下あるいは欠損している箇所があれば、そこには血流が少ないか、途絶しているか、であり、虚血があると診断することができます。心筋虚血あるいは壊死した箇所は核磁気共鳴画像MRI検査で検出することもできます。
血液検査
心筋梗塞の場合には、壊死した心筋から細胞内の成分が逸脱してきて、血液中に流れ出ます。血液マーカーといわれます。血液検査をすることにより検出できます。これには、クレアチニンキナーゼ CK、AST,  ALTや心筋トロポニン、ミオグロビンなどがあります。

 


 冠動脈検査
冠動脈病変の診断のためには冠動脈CT検査が手早いでしょう。ただし、これで冠動脈内腔のすべてが観察できるわけではないので、限界があるとはいえます。
ゴールデンスタンダードとして、標準となるのが冠動脈カテーテル造影検査です。
冠動脈は大動脈の起始部から分枝します。はじめに右と左の二つに分かれます。左冠動脈はすぐに左前下行枝と左回旋枝という大きな枝に分かれます。これを右冠動脈と合わせて、「冠動脈は3本ある」といいます。左冠動脈が二つに分かれる手前の部分は左主幹部といわれます。
冠動脈はふつうのレントゲンでは写りませんから造影剤が必要です。これを冠動脈に直接注入するための細いチューブをカテーテルといいます。このカテーテルを足の付け根や肘の動脈から冠動脈まで進めて、造影剤を流して動画撮影します。造影剤の流れる映像を見て、冠動脈内腔のどこがどの程度狭くなっているかを診断します。これが冠動脈カテーテル造影検査です。
攣縮性狭心症が疑われるときには、薬物を注入して、攣縮を誘発させることができます。また、このとき心室内腔の造影像を得て、心筋壊死の有無やその範囲を知ることもできます。
血管内は痛みを感じませんので、検査中に痛みを感じるのは最初の局所麻酔のときだけです。検査全体に要する時間は、検査の内容にもよりますが30分から1時間程度です。検査の後は圧迫して止血します。この間(6~8時間)は安静にしていなければなりませんので、入院することが必要です。
虚血性心疾患の予防

虚血性心疾患は冠動脈硬化のために起こります。これを予防するためには動脈硬化を予防しなければなりません。それには日常生活はどういう形で過ごすのが望ましいのでしょうか?
まず、対象例の年齢、性別、身長・体重・腹囲など、喫煙、飲酒などの生活習慣、そして、血圧などの管理の対象となる検査数値の面から望ましい形を考え、食事、運動、知的活動のそれぞれのあり方を考えてみましょう。

第一は生活習慣の現状と管理目標とする数値です。
血圧は140/90mmHg未満を維持するようにします。高齢者の場合には150~160/90mmHg未満とします。血圧は朝(朝食前)だけではなく、ときには夕方あるいは就寝前にも測定してみます。夜になると血圧が上昇する夜間高血圧という場合があるからです。
健康診断などでの血液生化学検査では、総コレステロールは240 mg/dl未満、LDLコレステロールは140 未満、HDLコレステロールは40 以上、トリグリセライドは150 未満が目標です。血糖は125 以下、ヘモグロビンA1cは6.5%未満が青信号です。尿酸 7.2 以下、クレアチニン 1.2以下も確かめておきましょう。

 

また、服用している薬の内容を確認してください。
肥り過ぎがいけないのですが、痩せ過ぎもいけないといわれています。身長と体重からBMI(body mass index)を計算します。BMIは「体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)」で計算します。身長167 cm、体重 67 kgであれば、67 ÷(1.67×1.67)=24 です。22であれば標準体重であるということができ、25を越えると肥満です。腹囲については男性85 cm以上、女性では90 cm以上を腹部肥満とします。
メタボリック症候群というのは腹部肥満がまずあって、脂質異常、血圧高値、高血糖の3項目のうち2項目以上ある場合をいいます。すなわち、腹部肥満がある場合、それぞれの検査値が基準値以下でも高めであれば動脈硬化が進行して虚血性心疾患を発症しやすいという疫学に基づく症候群です。
さらに、喫煙していれば、禁煙しなければなりません。
アルコールは飲み過ぎないようにしましょう。一日に飲む量の目安としては、それぞれ、ビール(度数5 %)500 mlまで、清酒(12.5 %)一合まで、焼酎(25 %)100 mlまで、ウイスキー(40 %,)ダブルで一杯以下です。
睡眠時間は8時間をぐっすり休むこと。快食、快眠、快便が基本です。
第二は食事のカロリーです。摂取カロリー数の推定には80 kcalを1単位とする糖尿病食品交換表が便利です。80 kcalというのは鶏卵1個が該当します。ファミリー・レストランのメニューにもカロリーや塩分量が表示されるようになりました。
適正なカロリー量はBMIを22 とする「標準体重×30」です。つまり、「身長(メートル)×身長(メートル)×22×30」と計算されます。身長 167 cmの例ならば、1840 kcal です。
第三は、食事の内容です。高血圧があれば、食塩制限が大事です。レストランのメニューの表には使用されている食塩含量も記載されるようになっています。注意してご覧ください。摂取食塩量の推定のためには、夜間尿による食塩排泄量計量計を用いることもできます。
日本高血圧学会では食塩摂取量は高血圧の人では一日6 g 未満を目標としています。高血圧がない人の場合、厚生労働省の健康日本21では、一日、男性で9 g 未満、女性で7.5 g未満を目標としています。成人の食塩必要量は一日1.5 gであり、ここまで減らしても差し支えないといわれます。日本心臓財団では、すべての人に一日6 g 未満を目標にすることを推奨しています。塩分の排出を促す食事もよいようです。りんご、大豆製品、いも類、海藻類などがお勧めです。

 

野菜はたっぷり一日350 gが適当とされています。野菜の抗酸化成分は老化を進行させる活性酸素を無害化するといいます。野菜を最初に食べることで満足感を得ておくと肥満の解消にも役立つといいます。脂肪分、つまり飽和脂肪酸が多いものを控えるのがよく、肉ならば、脂肪の少ない赤身の肉がよいのです。おすすめは魚と大豆です。これらの他に摂ることをお勧めするものにはカルシウム、マグネシウム、植物繊維に富んだ食品があります。魚、豆類のほか、いも類、野菜、そして果物、牛乳などです。
高尿酸血症も注目されています。高尿酸血症はCKDを進行させ、虚血性心疾患にも影響するといわれますので、クレアチニンが高く、いわゆるCKDがある人などでは、これに対処しておくことも必要でしょう。
第四は運動です。歩くだけならば、誰にでもできます。若い人ならば、一日六千歩から一万歩くらいを目標に歩いてください。
歩くことには運動筋の萎縮を予防、平衡感覚を維持して転倒を予防する、という効用がありますが、エネルギー消費という効用も期待されています。普通の速さで歩くと、六千歩で200キロカロリーが消費されます。少し速めに、脈が速くなる程度には歩くことが望ましいといいます。 これらの疾患は、高血圧や高脂血症による動脈硬化から進展することが多いため、生活習慣病の一つとして、生活習慣の改善による予防が重要視されています。

 

公益財団法人 日本心臓財団より引用(2018年4月現在)

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